日記と小物語
武器を捨てた日
「さぁ、新しい事を始めなさい。
あなたは新しく生まれたのです。」
すぼめた両手をパッと開きながら海に向かって前に出した。
まるで、持っている刀を海に投げ入れるようだった。
「もっと大きな海へと旅立ちなさい。」
ボクは船に乗った。
大きな海へと航海に出かけた。
〜日本語手話 「新しい」 編~
サルの惑星
「君は何も見てはいけない。何も聞いてはいけない。何も話してはいけない。」
サルの惑星の感覚器官が言った。
見ざる聞かざる言わざるサルは、ある日、視覚と聴覚と言語力を奪われた。
「なぜ、私から全てを奪うのですか?私は、始めから何も持っておりません。取るに足りないただの一匹のサルです。」
「君は、私の大事な腰掛けを隠したからだ。」
「腰掛けは、始めから、私がいつも座る場所に置いてありました。なぜここに置かれているのだろう?と疑問に思っておりました。」
小さなサルは切々と伝えた。
しかし、サルの感覚器官長は言った。
「それは、分かっている。しかし、君は腰掛けを見つけるその前に、目を両手で塞ぎながら、「私は目が見えません。探せません。」と叫んだら良かったのだ。」
小さなサルは、泣きたかったが、泣く声が出なかった。
小さなサルは、何も見えなくなったが、見えるかのように振る舞った。
小さなサルは、何も聞こえなかったが、音楽だけは聴く事が出来た。
No music, No life サル
アロマ空間デザイナー kayo
キリンになりたい
中指を立てて笑うキミ達にボクは言った。
「兄ですか?弟ですか?」
中指の腹を見せながらボクは言った。
「“背”が高い私はキリンです。ライオンが来ても5〜6匹は返り討ちをするラリアートが得意です。」
手話は言葉、言葉はアート。
無知なる手の表現はアートを失う。
〜日本語手話 「兄」 「弟」 指文字 「せ」編〜
不可能
スペースデブリ
「あなたは、なぜ宇宙飛行士になりたいのですか?」
面接官が私に尋ねた。
「泳ぐより歩きたかったアリエルがいました。
歩くより走りたかった人がいました。
走るより飛びたかった人がいました。
私は、飛ぶより地球から逃げたかったのです。」
「あなたの内なる負の感情は、更なる負を生み出し続け、負の感情で覆われてしまうでしょう。覆いを取り去りなさい。」
面接官は私を諭した。
「覆いを少しずつ取り除いてくれる人が現れました。大丈夫です。その時には、遥か彼方にある宇宙へ飛び出し、空を越え海へと舞戻って来ます。」
# ケスラーシンドローム