日記と小物語

2024-03-16 22:07:00

武器を捨てた日

「さぁ、新しい事を始めなさい。

あなたは新しく生まれたのです。」

 

すぼめた両手をパッと開きながら海に向かって前に出した。

まるで、持っている刀を海に投げ入れるようだった。

 

「もっと大きな海へと旅立ちなさい。」

 

ボクは船に乗った。

 

大きな海へと航海に出かけた。

 

〜日本語手話 「新しい」 編~

 

2024-03-15 21:48:00

サルの惑星

「君は何も見てはいけない。何も聞いてはいけない。何も話してはいけない。」

サルの惑星の感覚器官が言った。

 

見ざる聞かざる言わざるサルは、ある日、視覚と聴覚と言語力を奪われた。

 

「なぜ、私から全てを奪うのですか?私は、始めから何も持っておりません。取るに足りないただの一匹のサルです。」

 

「君は、私の大事な腰掛けを隠したからだ。」

「腰掛けは、始めから、私がいつも座る場所に置いてありました。なぜここに置かれているのだろう?と疑問に思っておりました。」

小さなサルは切々と伝えた。

 

しかし、サルの感覚器官長は言った。

「それは、分かっている。しかし、君は腰掛けを見つけるその前に、目を両手で塞ぎながら、「私は目が見えません。探せません。」と叫んだら良かったのだ。」

 

小さなサルは、泣きたかったが、泣く声が出なかった。

 

小さなサルは、何も見えなくなったが、見えるかのように振る舞った。

 

小さなサルは、何も聞こえなかったが、音楽だけは聴く事が出来た。

 

 

No music, No life サル

 

 

アロマ空間デザイナー kayo

2024-03-09 13:15:00

キリンになりたい

中指を立てて笑うキミ達にボクは言った。

「兄ですか?弟ですか?」

中指の腹を見せながらボクは言った。

「“背”が高い私はキリンです。ライオンが来ても5〜6匹は返り討ちをするラリアートが得意です。」

 

手話は言葉、言葉はアート。

無知なる手の表現はアートを失う。

 

〜日本語手話 「兄」 「弟」 指文字 「せ」編〜

 

 

 

2024-03-05 23:29:00

不可能

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すぼめた右手の指先を口の左端につけ、回転させながらそっと指を開いた。

そして君はこう言った。

「キミの大好きな物をボクは分かっているよ。」

ボクは悲しい気持ちでこう言った。

「ありがとう。でも、沢山のトゲがあるんだ。」

君は、右手の平を頬にあて、後ろへそっと撫でながら言った。

「これなら大切なままでいいじゃないか。」

 

「そうなる事を願っている。」

とボクは言いかけた。

 

 

 

日本語手話 「バラ」「青」編

 

2024-03-04 22:33:00

スペースデブリ

「あなたは、なぜ宇宙飛行士になりたいのですか?」

面接官が私に尋ねた。

 

「泳ぐより歩きたかったアリエルがいました。

歩くより走りたかった人がいました。

走るより飛びたかった人がいました。

私は、飛ぶより地球から逃げたかったのです。」

 

「あなたの内なる負の感情は、更なる負を生み出し続け、負の感情で覆われてしまうでしょう。覆いを取り去りなさい。」

面接官は私を諭した。

 

「覆いを少しずつ取り除いてくれる人が現れました。大丈夫です。その時には、遥か彼方にある宇宙へ飛び出し、空を越え海へと舞戻って来ます。」

 

# ケスラーシンドローム

 

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