日記と小物語

2025-02-19 13:41:00

一語

1000005603.jpg

「もっとぼんやりでいいんだよ」

とバームクーヘンは言った。

 

「なんで?バームクーヘンが、ぼんやりしたらカステラやスポンジ生地になっちゃうじゃない。」

「はは、いいんだよ。それで。カステラの底にはザラメがある。一番美味い。スポンジ生地はロールケーキになってカラフルなフルーツとクリームをクルッと包み込むのさ。

最高じゃないか。」

 

「でも、輪郭のはっきりしたバームクーヘンがいいんじゃないの?」

 

「ボクは一本の棒に豚の丸焼きみたいにくるくると回転させられてるだろ?何度も何度も刷毛で生地を重ねて重ねて火加減を見ながら丁寧に丁寧に年輪を作ったんだ。

だから、分かるんだよ。

キミははっきりさせなくていい。

もっと、ぼんやりでいい。」

 

日本生まれのショートケーキはバームクーヘンの一言を聴いて少し自分を労ろうと思った。